心臓血管外科|医師
中原 嘉則
「狭心症」とは、どのような病気ですか?
動脈硬化などが原因で、心臓に栄養を送る血管(冠動脈)が狭くなり、心臓への血流が不足する病気です。主な症状として、胸の痛みや締め付けられる感覚、動悸などが現れます。 狭心症は、運動やストレスで症状が出る「労作性狭心症」、安静時にも発作が起こり心筋梗塞に進行する危険がある「不安定狭心症」、血管の一時的な痙攣が原因の「異型狭心症」に分類されます。
狭心症の治療法には、どのようなものがありますか?
治療には大きく分けて3つの柱があります。
一般療法(生活習慣の改善)
運動(週5日以上、30〜60分程度の中等度から強度の有酸素運動)、完全な禁煙、体重管理などです。体重や腹囲の減少は、危険因子(血糖、血圧、脂質など)を包括的に改善するために重要です。
薬物療法
すべての患者さんにとって基本となる治療です。血液をサラサラにするお薬(抗血栓薬など)や、血管を広げるお薬(硝酸薬)、脂質を下げるお薬などを用い、症状の緩和と心筋梗塞の予防を目指します。
血行再建術(カテーテル治療またはバイパス手術)
狭くなった血管の先に、物理的に血液が流れるようにする治療です。
「冠動脈バイパス手術(CABG)」とは、どのような手術ですか?
狭くなった冠動脈の先に、新しい血液の通り道(う回路=バイパス)を作る外科手術です。患者さんご自身の胸や手足の血管(グラフトと呼びます)を使い、心臓の大動脈から冠動脈の狭窄部より先に接続し、血流を確保します。これにより、狭心症の症状を和らげ、将来の心筋梗塞を予防することが期待できます。
バイパス手術とカテーテル治療(PCI)は、どう違うのですか?
狭心症を「交通渋滞」に例えると、以下のように異なります。
カテーテル治療(PCI)
渋滞の原因となっている「壊れた道路(狭窄部)」を、風船やステント(金属の筒)を使って直接修理する治療です。迅速で体への負担が少ない(低侵襲)のが利点ですが、同じ場所が再び渋滞する(再発・再狭窄)可能性があります。
バイパス手術(CABG)
渋滞を避けるための「新しい迂回(うかい)路」を建設する治療です。工事(手術)は大規模になりますが、一度作った迂回路は長期間にわたり機能することが期待でき、再発が少なく、より根本的な治療と言えます。
バイパス手術の利点は何ですか?
グラフト(バイパス)の耐久性が高いとされています。特に、胸の裏側にある「内胸動脈」という血管を使ったバイパスは極めて丈夫で、20年後も95%以上が開通しているという報告があります。多くの研究で、バイパス手術はカテーテル治療に比べて、将来の心筋梗塞の発生率が低いことが示されています。
手術はどのように行われるのですか?
全身麻酔下で、3〜5時間程度の手術です。入院期間は通常1〜2週間です。 心臓を動かしたまま手術を行う「オフポンプCABG」という方法と、人工心肺装置を使って心臓を止めて行う方法があります。オフポンプ手術は、患者さんによっては合併症が少ないとされていますが、高い技術が要求されます。 当院では、合併症をできる限り減らすため、このオフポンプCABGの技術を磨いてきました。その結果、現在ではほとんどすべての症例でオフポンプ手術を行っており、これは外科医だけでなく、麻酔科医、看護師、臨床工学技士など、多職種の緊密な連携によって支えられています。
治療法は、どのように決めるのですか?
同じ狭心症でも、患者さんごとに最適な治療法(薬物療法、カテーテル治療、バイパス手術)は異なります。 当院では、循環器内科医、心臓血管外科医、麻酔科医、集中治療医が一体となった「ハートチーム」を組み、カンファレンスで協力して、患者さん一人ひとりの状態に合わせた治療方針を決定し、提供しています。
治療を行う上で最も大事にしていることは何ですか?
当たり前のことですが、患者さんとご家族に、安心して治療を受けていただくことです。 そのために、丁寧な説明を尽くし、頻繁に患者さんの元へ足を運び、お話をよく聞くことを常に心がけています。



