循環器内科|医師
高山 守正
「肥大型心筋症」とは、どのような病気ですか?
心臓の筋肉が原因不明のまま厚くなってしまう、国の指定難病の一つです。遺伝子の異常が原因と考えられているケースが約3分の2を占めます。 厚くなった心筋、特に心室を左右に分ける壁(心室中隔)が、血液の出口を塞いでしまう「閉塞性」のタイプと、塞がない「非閉塞性のタイプがあります。出口が塞がれると、心臓は強い圧力をかけて無理に血液を送り出そうとするため、大きな負担がかかります。また、筋肉が硬くなることで血液を十分に取り込めなくなる(拡張障害)という問題も生じます。
どのような症状が出ますか?
主な症状は、運動した時の息切れ、胸の圧迫感や痛み(狭心症)、疲れやすさ、立ちくらみや失神などです。また、不整脈を伴うと動悸がすることもあります。 この病気で最も注意すべきなのは「突然死」のリスクです。心室頻拍などの危険な不整脈が原因で、その発生率は一般の方の10〜20倍ともいわれ、年間0.5〜1%の患者さんに起こるとされています。
治療はどのように行うのですか?
治療の基本は薬物治療です。 心臓の過剰な収縮を抑え、心筋の酸素消費を減らすための薬(ベータ遮断薬やカルシウム拮抗薬など)を使用します。また、この病気は脱水によって症状が悪化しやすいため、水分を多めに摂ることも重要です。
薬物治療で症状が十分に改善しない閉塞性の患者さんには、厚くなった心筋を薄くして閉塞を解消する「中隔縮小治療」という、より根本的な治療を検討します。
「中隔縮小治療」には、どのような方法がありますか?
大きく分けて2つの方法があります。
- 外科手術(中隔心筋切除術):胸を開いて心臓を直接見ながら、厚くなった心筋を外科的に切除する方法です。古くから行われている標準的な治療法で、当院では心臓の奥深くにある厚い心筋まで切除できる新しい術式を開発し、非常に良好な成績を収めています。
- カテーテル治療(PTSMA):足の付け根などからカテーテルという細い管を心臓まで進め、厚くなった心筋を栄養している血管の枝に、ごく少量のアルコールを注入する方法です。アルコールによってその部分の心筋に意図的に小さな心筋梗塞を起こさせ、組織を壊死・縮小させることで閉塞を軽くします。
手術とカテーテル治療は、どのように使い分けるのですか?
まず、薬物治療を2種類以上試しても症状が続き、心臓内の圧力差(圧較差)が50mmHg以上ある方が、中隔縮小治療の対象となります。
どちらの治療法を選択するかは、患者さんの年齢や状態に応じて慎重に判断します。
- 外科手術:比較的お若い方(40歳未満など)、心臓弁などにも同時に治療が必要な方、心筋の異常が特殊な方に適しています。
- カテーテル治療:ご高齢の方(65歳以上など)、他の病気のために外科手術のリスクが高い方に適しています。
治療後の経過について教えてください。
どちらの治療法でも、閉塞が解消されることで症状は劇的に改善し、突然死のリスクも大きく下がります。治療後は多くの方が元気に過ごされており、大きなトラブルなく天寿を全うされることが期待できます。入院期間の目安は、外科手術で約2週間、カテーテル治療で約10日間です。
貴院の強みは何ですか?
当院は、米国の基準を満たす肥大型心筋症センターです。 中隔縮小治療の実施数は年間50〜60例と、豊富な経験を持っています。外科、内科、不整脈科、放射線科など各分野の専門家がチームを組み、全ての患者さんについてカンファレンスを行って最適な治療方針を決定する「総合医療」体制が最大の強みです。



