血管外科|医師
新本 春夫
「大動脈瘤」とは、どのような病気ですか?
心臓から全身へ血液を送る最も太い血管である「大動脈」の壁が弱くなり、こぶのように膨らんでしまう病気です。全身の動脈瘤のうち約7割を占めるお腹の腹部大動脈瘤と、胸の胸部大動脈瘤が代表的です。
どのような症状がありますか?
大動脈瘤は「サイレントキラー(声なき殺人者)」とも呼ばれ、破裂するまでほとんど症状がないのが特徴です。多くは、他の病気の検査で偶然発見されます。 ただし、お腹や腰、背中、胸に強い痛みが続くような場合は、こぶが破裂しかかっている「切迫破裂」のサインかもしれず、命に関わる危険な状態です。速やかに医療機関を受診する必要があります。
大動脈瘤と診断されたら、どうすればよいですか?
まずはCTなどの画像検査で、こぶの正確な場所、大きさ、形を詳しく調べます。 一度できたこぶが自然に小さくなることはなく、小さくするお薬も現在のところありません。血圧を適切に管理することで、こぶが大きくなるスピードをある程度抑えることはできますが、基本的には年齢と共に少しずつ大きくなっていきます。
一般的に、無症状であっても以下の大きさを超えると破裂のリスクが高まるため、手術が検討されます。
- 腹部大動脈瘤:直径50mm(5cm)以上
- 胸部大動脈瘤:直径60mm(6cm)以上
これより小さくても、形がいびつな場合や、急速に拡大している場合、症状がある場合には手術が必要です。最終的な方針は、専門医とよく相談して決めることが大切です。
どのような治療法がありますか?
治療法は、大きく分けて2つあります。
- 人工血管置換術(外科手術)
- ステントグラフト内挿術(カテーテル治療)
「人工血管置換術」と「ステントグラフト治療」の違いは何ですか?
それぞれに長所と短所があり、患者さんの状態に合わせて最適な方法を選択します。
| 人工血管置換術 (外科手術) |
ステントグラフト治療 (カテーテル治療) |
|
|---|---|---|
| 治療法 | 胸やお腹を切り、弱くなった血管を丈夫な人工血管に直接取り替える。 | 足の付け根の小さな傷からカテーテルを入れ、こぶの内側にバネ付きの人工血管(ステントグラフト)を留置して、こぶに血が流れないようにする。 |
| 長所 | こぶそのものを治す根本的な治療であり、治療後の安定性が高い。 | 体への負担が非常に少なく、入院期間も短く、回復が早い。 |
| 短所 | 体への負担が大きく、入院やリハビリが長期間になりやすい。 | こぶの形によっては治療できない場合がある。治療後も定期的な検査(CTなど)が生涯にわたって必要。 |
どちらの治療法が良いのでしょうか?
どちらか一方が優れているというわけではなく、こぶの場所・形・大きさ、そして患者さんご本人の年齢や全身の状態などを総合的に評価して、最も適した治療法を判断します。十分に説明を聞き、納得した上で治療法を選択することが重要です。
貴院では、どのように治療法を選択していますか?
当院では、それぞれの治療法の長所と短所をふまえ、個々の患者さんにとって最も良いと考えられる治療法を選択しています。 例えば腹部大動脈瘤では、外科手術とステントグラフト治療の割合はほぼ半々です。これは、画一的な方針を立てるのではなく、一例一例の病状を丁寧に検討し、最適な治療を提供した結果だと考えています。



