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ドクターズボイス

小児に行うカテーテルによる心臓病の治療

小児循環器内科|医師

矢崎 諭

どのような病気にカテーテル治療が行われますか?

先天性心疾患(生まれつきの心臓病)に対するカテーテル治療は、大きく2つの目的で行われます。

  1. 手術に代わる、カテーテルのみで完結する治療
    • 心房中隔欠損(ASD)や動脈管開存(PDA)といった、心臓内の穴を「閉鎖デバイス」という器具で閉じる治療。
    • 肺動脈弁狭窄など、狭くなった心臓の弁を「バルーン(風船)」で広げる治療。
  2. 外科手術と組み合わせて行う補助的な治療
    • 手術後に狭くなってしまった血管をバルーンで広げる治療。
    • 体に不要な血管を「コイル」や「閉鎖栓」といった器具で詰める治療。
    • 不整脈を合併している場合のカテーテルアブレーション治療。

患者さんは新生児から成人まで幅広く、特に3歳未満のお子さんが最も多くなっています。

治療はどのように進められますか?

基本的に全身麻酔をかけて眠っている間に行います。 足の付け根や首の血管からカテーテルという細い管を心臓まで進め、まず造影剤を使った検査で病状を正確に評価します。その後、同じカテーテルを使って治療を行い、最後に治療効果を再度検査で確認して終了となります。治療内容にもよりますが、全体の所要時間は1時間半から3時間程度です。

心房中隔欠損(ASD)はどのように治療するのですか?

カテーテルを用いて、2枚の皿が重なったような形状の「閉鎖栓デバイス」を心臓まで運びます。カテーテルの中で細長く折りたたまれているデバイスを、心臓の穴(欠損孔)の部分で解放し、穴を挟み込むようにして留置します。胸を切開する外科手術を行うことなく、穴を閉じることが期待できます。

合併症などのリスクはありますか?

カテーテル治療は体に負担の少ない治療法ですが、侵襲的な(体を傷つける)治療であるため、合併症のリスクが全くないわけではありません。 2019年の日本国内の報告によると、小児のカテーテル治療約5,000件のうち、合併症の発生率は4.3%で、その中で重大な合併症は1.1%に認められています。

治療はどのようなチームで行われますか?

まず治療方針を決める段階で、小児循環器科医と心臓血管外科医がカンファレンス(検討会)を開き、その患者さんにとってカテーテル治療と外科手術のどちらがより適切かを慎重に判断します。 実際の治療の場では、小児循環器科医を中心に、麻酔科医、看護師、放射線技師、臨床検査技師といった多職種の専門家がチームを組んで協力し合います。万が一の事態に備え、心臓血管外科医のバックアップ体制も整えています。

入院期間や治療後の生活について教えてください。

一般的なカテーテル治療であれば約4日間、心房中隔欠損の閉鎖術などでは7日間程度の入院となります。 治療後は、血の塊(血栓)ができるのを防ぐためのお薬を飲んでいただくことが多く、その場合は打撲や出血を伴う行動に注意が必要です。また、治療内容によっては1〜3ヶ月程度の軽い運動制限をお願いすることがあります。

貴院での治療実績について教えてください。

当院の小児科では、近年、年間120件から150件程度のカテーテル治療を行っています。 担当医は、この分野で約25年の経験があり、特に心房中隔欠損の閉鎖術については、日本に導入された初期から携わり、これまでに1,000例を超える治療に関わってきました。

治療にあたって大切にしていることは何ですか?

最も重視しているのは、その場限りの結果だけでなく、患者さんの長期的な将来を見据えて、本当にカテーテル治療が最善の選択肢なのか、外科手術の方がメリットが大きいのではないか、という「適応判断」をしっかりと行うことです。 そして、治療の実施にあたっては、効果を追求するあまり無理をするのではなく、カテーテル治療の限界を認識し、合併症を極力起こさないように「安全な引き際をわきまえること」が重要だと考えています。そのためには、リスクを正しく評価するための十分な経験が不可欠です。

矢崎 諭

成人先天性心疾患センター長/部長