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ドクターズボイス

大動脈弁の手術治療

心臓血管外科|医師

岩倉 具宏

「大動脈弁狭窄症」とは、どのような病気ですか?

心臓の出口にあり、全身に送り出された血液が心臓に逆流しないように機能している扉が「大動脈弁」です。この大動脈弁が、加齢などが原因で硬くなって開きにくくなり、心臓が血液を送り出しにくくなる病気が大動脈弁狭窄症です。
正常な大動脈弁は薄くしなやかな3枚の弁ですが、狭窄症になると、弁が分厚くなったり(肥厚)、石のように硬くなったり(石灰化)、隣の弁とくっついてしまったり(癒合)します。

どのような症状がありますか?

この病気の症状は非常に気づきにくいのが特徴です。「最近少し疲れやすくなった」と感じて、無意識に運動や外出を控えるようになるなど、ご自身では「年のせい」だと思い込んでいるケースも少なくありません。 息切れ、疲れやすさ、足のむくみなどが主な症状ですが、ゆっくりと進行するため、症状に慣れてしまって見過ごされることもあります。

どのように診断するのですか?

最も手軽で重要なのが、聴診器で心臓の音を聞く「聴診」です。弁の出口が狭くなっていると、血液が通る際に特徴的な雑音(心雑音)がするため、病気を疑うきっかけになります。 確定診断や重症度の評価は、心臓超音波(エコー)検査やCT検査で行います。これらの検査で、治療方針を決定します。

どのような治療法がありますか?

残念ながら、硬くなった弁を元に戻すお薬はないため、狭窄が重症になった場合は、弁を取り替える治療が必要になります。治療法は、主に以下の3つです。

  1. 大動脈弁置換術(胸骨正中切開) :胸の真ん中の胸骨を切開して心臓にアプローチする、最も標準的で歴史のある外科手術です。心臓を一旦止め、硬くなった弁を完全に取り除き、新しい人工弁を縫い付けます。
  2. 低侵襲心臓手術(MICS):右胸の肋骨の間に数カ所の小さな穴を開け、そこからカメラや器具を入れて行う外科手術です。胸骨を切らないため、体への負担が少なく、傷が小さく目立たないのが利点です。
  3. 経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI:タビ):足の付け根の血管などからカテーテルを入れ、新しい人工弁を心臓まで運び、古い弁の内側に留置する治療です。胸を切らず、心臓も止めないため、体への負担が最も少ない方法です。

手術で使う「人工弁」には、どのような種類がありますか?

人工弁には大きく分けて2種類あり、患者さんの年齢やライフスタイルに応じて選択します。

機械弁 生体弁
素材 カーボン(金属) 牛や豚の心臓の膜
長所 耐久性が非常に高く、長持ちする。 血栓ができにくく、原則として血をサラサラにする薬(ワーファリン)を飲み続ける必要がない。
短所 血栓(血の塊)予防のため、生涯ワーファリンを飲み続ける必要がある。 機械弁に比べて耐久性が劣り、将来的に再手術が必要になる可能性がある。
(※ただし、10年間で再手術が必要になる方は約5%です)

どの治療法が良いのでしょうか?

どの治療法が最適かは、患者さん一人ひとりの状態によって異なります。

  • 外科手術(胸骨正中切開/MICS):比較的お若く、体力があり、根本的な治療を望まれる方(目安として80歳以下)に適しています。
  • TAVI(カテーテル治療):ご高齢の方(目安として80歳以上)や、他のご病気のために体への負担が大きい外科手術が難しい方に適しています。

75歳〜80歳くらいの方は、全身状態や併存疾患などを総合的に判断し、循環器内科医、心臓血管外科医、麻酔科医などから成る「ハートチーム」で十分に検討し、患者さんにとって最も良い治療法をご提案します。

退院後に気をつけることはありますか?

ご自身の体調変化に注意することが大切です。特に以下の6つのポイントをチェックしてみてください。

  • 息切れ
  • ドキドキ(動悸)
  • 足のむくみ
  • 急な体重増加(むくみのサイン)
  • 胸の痛み
  • 手術の傷の異常や、心臓の音の変化

岩倉 具宏

低侵襲心臓病総合治療センター長/主任部長