小児循環器内科|医師
矢崎 諭
「成人先天性心疾患」とは何ですか?
小児心臓医療の進歩により、生まれつき心臓に病気(先天性心疾患)を持って生まれた子どものほとんどが、成人を迎えられるようになりました。「成人先天性心疾患(ACHD)」とは、そうした成人になられた患者さんの総称です。国内では、毎年新たに約1万人の方が成人期に移行していると推計されています。
子どもの頃に手術を受ければ、完全に治るのではないのですか?
幼少期の心臓手術は救命のために非常に重要ですが、多くの場合、それは「根治(完全に治癒すること)」ではなく「修復」です。 そのため、成人になられた後も、心不全や不整脈、再手術やカテーテル治療の必要性、妊娠・出産に関する問題など、年齢を重ねる中で新たな健康上の課題に直面することが少なくありません。生涯にわたる専門的なフォローアップが不可欠です。
成人先天性心疾患の患者さんは、どのような医療体制で支えられているのですか?
日本では、小児科から成人診療科へスムーズに移行し、生涯にわたって適切な医療を受け続けられるよう、国を挙げた医療体制の整備が進められています。診療ガイドラインの策定や専門医制度の設立に加え、専門性の高い医療を提供できる施設が「基幹病院」「連携病院」として認定されています。 当院は、その中でも専門医を育成する役割も担う「総合修練施設」として認定されています。
貴院の「成人先天性心疾患センター」は、どのような役割を担っていますか?
2021年に設立された当センターは、成人先天性心疾患の患者さんに包括的な医療を提供することを目的としています。 最大の特徴は、多職種によるチーム医療です。小児循環器科医、循環器内科医、心臓血管外科、産婦人科、遺伝科といった各科の医師に加え、看護師、理学療法士、臨床心理士、ソーシャルワーカーが連携し、患者さん一人ひとりを多角的にサポートします。 主な役割として、継続的な内科管理、再手術や緊急時の対応、小児科からの移行医療、これまで通院が途絶えていた患者さんの受け入れ、心疾患を持つ女性の妊娠・出産管理など、幅広いニーズに対応しています。
成人先天性心疾患の患者さんには、どのような治療が行われていますか?
当院では、外科手術からカテーテル治療まで、最新の治療を提供しています。2023年には、成人先天性心疾患の患者さんに対する外科手術が、当院の全心臓手術の約2割を占めました。 特に、ファロー四徴症などの術後遠隔期に必要となることが多い「肺動脈弁置換術」は、従来は外科手術しかありませんでしたが、近年は体への負担が少ないカテーテルでの治療が可能になり、当院でも積極的に行っています。
医療以外に、どのようなサポートがありますか?
病気と長く付き合っていく上では、医療だけでなく、社会生活における様々なサポートも重要になります。当センターでは、利用可能な社会的制度や資源についてまとめた独自のパンフレットを作成し、患者さんにお役立ていただいています。 医療に関するご相談はもちろん、公的補助制度の活用や、生活上の不安など、あらゆる事柄について、担当の医師や看護師、臨床心理士、ソーシャルワーカーなど、チームの誰にでもお気軽にご相談ください。



