成人先天性心疾患センター

当院は昭和52年に開設され、先天性心疾患に対する外科手術がまだ国内の限られた施設でしか行われていなかった時代から、たくさんの患者さんの治療を実施してきました。治療を受けた患者さんの多くが成人となり、定期検診、内科的治療、必要な方には外科治療(再手術)・カテーテル治療といった診療を当院で継続しています。その実績に基づいて、他の病院で診療を受けている患者さんも、何らかの治療が必要となった際には当院にご紹介いただいて治療を行っています。
一方、日本国内全体においても成人先天性心疾患の患者さんは増加しており、その医療体制の整備はわが国の医療政策としても重要視されています。

このような医療状況に鑑み、当院では2021年、かねてより実施してきた成人先天性心疾患の診療を、成人先天性心疾患センターへリフレッシュしました。小児循環器科・循環器内科・心臓血管外科・産婦人科・看護部・リハビリテーション部・ソーシャルワーカーなど各分野で協働して診療にあたる体制を構築しています。

成人先天性心疾患診療の必要性と当院の体制

成人先天性心疾患診療の必要性

手術後の残存病変を抱えていたり、様々な理由で手術治療が受けられなかった患者さんも多く、特に成人期以降に心不全、不整脈、チアノーゼの進行などが問題化してくることがあり、生涯にわたり定期診療を継続していく必要があります。
また元々の心疾患に加え、加齢に伴う生活習慣病の併発に対する対応などが必要とされます。成人に達した患者さんに安心して受診していただける外来が求められています。

移行期医療について

先天性心疾患では、生涯にわたる治療と観察が必要ですが、小児と成人では直面する課題も異なります。そのため、成長によって小児から成人に移行する時期においては、「移行期医療」が求められます。移行期医療とは、小児の患者さんが小児期から成人期への成長過程においても継続的かつ良質な医療を受けられるようにすることです。

移行期医療においては、小児循環器科と循環器内科の医師が連携して診る体制をとります。必要に応じて、他科の医師、看護師、検査技師、臨床心理士など多職種の専門職による協働も行います。

また、患者さんが成人し、健全で自立した社会生活を送るためには、患者さん自身が病気に対して理解することが重要です。移行期医療において、当院の専門職チームが患者さん自身の教育に関わります。

妊娠・出産の準備のために

先天性心疾患の女性においては、基礎にある心疾患のことも考慮しながら、ライフステージに応じて身体的・精神的な健康の維持、向上を考えていくことが大切です。女性の身体的・精神的な健康は、ライフステージや月経、妊娠・出産、閉経などに伴う女性ホルモンの変動により大きく影響を受ける特性があるからです。
当院産婦人科ではこれらを考慮し、患者さんに寄り添った診療を多科多職種と連携し行っています。

ライフステージとは、就学、就職、自立、結婚、出産などのことで、人生の中で変化する 生活段階のことをいいます。

月経異常について

先天性心疾患の女性の中には、思春期から成人期にわたり月経異常(原発性・続発性無月経、月経不順、過多月経、月経困難症、月経前症候群・月経前不快気分障害など)を認める方がいます。しかし、月経異常に関してのケアは後回しになっている傾向があります。
当院産婦人科では、専門チームと連携して診療、治療を行い、少しでも快適に過ごせるようにサポートします。

妊娠・出産、避妊を含めた家族計画について

先天性心疾患の女性の妊娠・出産数は、増加傾向にあります。
しかし、先天性心疾患の患者さんの中には、妊娠・出産が母児の生命を脅かすほどリスクが高い場合もあります。そのため、先天性心疾患の女性が自らの妊娠・出産について考え、その選択を行っていくためには、正しい知識を身につけることが重要です。また、パートナーとも話し合っていくことも大事になります。
当院では、妊娠前に、患者さんの心疾患の状態を評価し、妊娠・出産・育児に関して情報提供とカウンセリングを行っています。 

また、先天性疾患の患者さんの中には、疾患の遺残症・続発症・合併症による身体的理由や社会的理由から、妊娠できない方や妊娠を希望されない方もいます。
当院では、先天性心疾患の女性が自ら人生設計を出来るように支援していきます。

主な診療計画

当院は今までの実績から成人先天性心疾患学会より総合修練施設に認定されています。原則として、同学会の示す総合修練施設の指針に基づいた診療を行います。

  • 成人先天性心疾患において専門外来医による診察を行う。
  • ハートチームカンファレンスを定期的に開催する。
  • 専任アドバイザーにより母体カウンセリングを行う
  • 当院の該当する患者に対し専任アドバイザーより積極的に移行医療を進める(引用7)。
  • 成人先天性心疾患の患者と家族への情報発信と教育を行う。
  • 相談窓口を設置して移行医療を円滑化、またカウンセリングを推進する。
  • 次世代での先天性心疾患再発等についての遺伝相談、カウンセリングを行う。
  • 患者会との連携を行う。
  • 患者教育(講座開催、市民講座、健康教室、料理教室、教育資材の開発)を行う。
  • 就業支援プログラムの開発を行う。
  • 成人先天性心疾患に関する臨床研究実施の母体となる。
  • 当院の臨床実績と研究成果の国内・国外へ情報発信する。
  • 本邦未導入の新規治療に対する実施の支援を行う。
  • 成人先天性心疾患学会のレジストリーに参加しデータを解析し論文化することで、本邦における成人先天性心疾患のエビデンスを構築し、エビデンスに基づいた室の高い医療を患者に提供する。
  • 成人先天性心疾患専門医の育成を行う。
  • コメディカルを対象に成人先天性心疾患患者の診療の教育の場を作る。

当院のカテーテル治療

診療にあたっては、外科手術のほかに、近年では低侵襲カテーテル治療やデバイスによる治療も増加しています。
下記の画像をクリックすると、当院で先天性心疾患に対して行うカテーテル治療について、詳しくご覧いただけます。

心房中核欠損のカテーテル治療
心房中核欠損のカテーテル治療
動脈管開存症のカテーテル治療
動脈管開存症のカテーテル治療

当院の外科的治療

当院では、1977年の開院から成人先天性心疾患に対する外科的治療を幅広く行っており、すべての疾患および合併症に対応してきました。症例数と手術成績において国内トップレベルの実績を有しています。

榊原記念病院 成人先天性心疾患手術の実績 (2004年1月〜2020年12月※府中移転後 17年間)
● 総手術数:1,200件
● 心臓血管外科 小児:665件
● 心臓血管外科 成人:535件

《心臓血管外科 小児》症例内訳と年度別手術件数

合計:665件
平均年齢:32.7歳(18~75歳)

心臓血管外科 小児では、特に単心室症を中心に、特殊な手技が必要となる場合や、先天性心疾患に特有な管理を要する症例を手掛けています。

単心室症例

合計:151件(内訳は重複あり)

手術死亡(急性期死亡) 3件(1.9%)
平均手術時間 5.6時間
平均術後入院期間 35日

二心室症例

合計:510件(内訳は重複あり)

手術死亡(急性期死亡) 1件(0.2%)
平均手術時間 4.3時間
平均術後入院期間 22日

《心臓血管外科 成人》症例内訳と年度別手術件数

総数:535件
平均年齢:56.3歳(18~88歳)

心臓血管外科 成人では、特に冠動脈バイパス手術や不整脈手術を中心に、後天的な合併症を有する症例を手掛けています。

チーム医療

先に述べたような「移行期医療」、患者さんのライフステージに応じた身体的・精神的な健康の維持・向上が重要である、成人先天性心疾患の診療においては、専門性を持つ複数の医療者による、縦割りでない連携が強く求められます。当院では、関連診療科の医師のほか、専門看護師、医療技術者、医療福祉専門部門から構成される成人先天性心疾患チームによる体制を整えています。

チームでは定期的に症例検討会やミーティングを開き、患者さんに最適な治療法を提案しています。

担当医師

小児循環器科

成人先天性心疾患センター長/部長 矢崎 諭
成人先天性心疾患センター長/小児循環器科 部長 矢崎 諭
※ 成人先天性心疾患専門医
主任部長  嘉川 忠博
主任部長 嘉川 忠博
副部長  上田 知実
副部長 上田 知実
※ 成人先天性心疾患専門医

循環器内科

主任部長  七里 守
主任部長 七里 守
部長  髙見澤 格
部長 髙見澤 格
院長  磯部 光章
院長 磯部 光章
※ 成人先天性心疾患専門医

心臓血管外科 小児

主任部長  和田 直樹
主任部長 和田 直樹
副院長 高橋 幸宏
副院長 高橋 幸宏

産婦人科

副部長 診療責任者  前田 佳紀
副部長 診療責任者 前田 佳紀
副部長  堀内 縁
副部長 堀内 縁

関連診療科のページ

小児循環器科

循環器内科

心臓血管外科 成人

心臓血管外科 小児

産婦人科

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