カテーテル治療は外科手術と比べ、治療に伴う身体の負担が少なくて済むことがメリットです

動脈管開存症は、心不全の危険性だけでなく、感染性心内膜炎の恐れもあるため、治療が好ましいケースが多く存在します。
治療には、開胸による外科手術、カテーテルによる治療の選択肢があります。カテーテルによる治療は、外科手術と比較して入院期間が短く、退院後直ちに社会復帰できます。外科手術は全身の負担が強く、なかなか、動脈管単独の治療に強く踏み込まれません。カテーテル治療は、そけい部に数ミリの創が残りますが、胸の部分には残りません。
治療方法の選択は、患者さんの年齢や動脈管の状態などからご提案します。

動脈管開存症( PDA)とは

画像提供:アボットメディカルジャパン合同会社

動脈管とは、肺動脈と大動脈をつなぐ血管のことです。

生まれる前の胎児は、肺を使って呼吸しないために心臓から肺への血液の流れを必要とせず、この動脈管が開いた状態にありますが、通常は、出生後自然に閉鎖します。
閉鎖が起こらず、本来は身体に流れるはずの血液の一部が、動脈管を通って肺動脈へ流れてしまう状態を、動脈管開存症(Patent Ductus Arteriosus: PDA)といいます。

動脈管開存症によって血管が開いたままになると、動脈管を経由して大動脈と肺動脈の間に血液の短絡が起こります。多くの場合、大動脈から肺動脈へのシャントが発生し、肺血流が増加し心臓の負担が増え、産まれた直後から体重が増加しない、呼吸の回数が多いなどの症状が現れます。

また、早産で生まれたお子さんは、血管の機能が未熟な状態で生まれてくるために、動脈管開存症の頻度が高くなります。特に、新生児呼吸窮迫症候群を合併したお子さんに比較的多く見られます。
先天性心疾患としては、その約5~10%を動脈管開存症が占め、心室中隔欠損症に次ぐ頻度でみられます。他の先天性心疾患を合併しやすく、合併症がある場合には、症状がお子さんごとに異なり、また治療法も異なります。

成人の動脈管開存症は、壮年期には無症状のまま経過することが多いです。しかし、加齢により息切れなどの心不全や動悸などの不整脈を生じることがあります。

診断の確定には、心臓の超音波検査やCT検査を行い、動脈管の太さや流れを確認します。また、胸部X線、心電図を実施します。

治療の選択

治療の選択肢として、薬物治療、外科治療、胸腔鏡による閉鎖治療、カテーテルによる動脈開存閉鎖システムを用いた閉鎖術、コイル塞栓術があります。患者さんの年齢や状態によって適応を判断します。

生まれたばかりのお子さんの動脈管開存症では、薬物治療によって動脈管が閉じることも多いのですが、薬物治療に反応しない場合には、外科手術やカテーテル治療が選択されます。

成人では、動脈管の石灰化の有無も適応を検討する要素になります。動脈管が小さく2mm以下の場合は、コイル塞栓術を選択し、2mmを超える場合は、動脈管開存閉鎖システムを用いた治療か、外科手術の適応となります。

カテーテル治療について

カテーテルによる動脈管開存閉鎖システムとは

動脈管開存閉鎖システムは、閉鎖栓(オクルーダー)とデリバリーシース(デリバリーシステム)により構成されています。デリバリーシースを使って血管の中に閉鎖栓を進め、患部まで運び、動脈管開存を閉鎖します。

使用する閉鎖栓

閉鎖栓は、コルク栓のような形状にデザインされています。ワイヤーの部分は、ニッケルとチタンの合金で、内部にポリエステル製の布がついています。形状記憶効果により伸縮性があり、カテーテル内に収納することができます。体内に安全に運搬できるように設計されています。

閉鎖栓(ADOⅠ)
閉鎖栓(ADOⅡ)

上記画像3点の提供:アボットメディカルジャパン合同会社

治療の手順

成人は局所麻酔を行うことが多く、小児は安全面から全身麻酔を行うことがあります。

1.デリバリーシースを動脈管を通して下行大動脈に進めます。(下記 図①)

2.閉鎖栓をデリバリーケーブル(閉鎖栓とネジでつなげる細い金属製のワイヤー)に装着し、デリバリーシースを通して下行大動脈まで進めます。閉鎖栓が少しデリバリーシースから出るところまで進め、閉鎖栓の先端を少し開きます。(下記 図②)

3.デリバリーシースごと少しずつ動脈管の位置まで引き戻し、さらに動脈管にしっかり固定するように、完全に閉鎖栓をデリバリーシースから出し展開します。(下記 図③)

4.大動脈の造影を行い、正確な位置に固定されているか確認ができたら、閉鎖栓からデリバリーケーブルを外します。これで治療は終了です。(下記 図④)

画像提供:アボットメディカルジャパン合同会社

閉鎖栓の説明動画

動画提供:アボットメディカルジャパン合同会社

入院から退院までの一例

動脈管開存症のカテーテル治療は、外科手術に比べて患者さんの負担が少なく、比較的短期間で回復できます。経過が順調であれば、数日内に退院が可能です。

退院後の生活

閉鎖栓が外れ、外科手術で取り出すことは非常にまれですが、閉鎖栓が動脈管に安定するまでの約1か月間は、激しい運動を避けてください。お仕事は、退位後数日程度してから復帰されることが多いようです。
治療後6か月間は、感染性心内膜炎の予防が必要です。歯科治療、手術などはなるべく避けてください。必要なときは事前に相談してください。

当院の実績と体制

当院では、循環器内科医、心臓血管外科医、麻酔科医、その他コメディカルなどの、ハートチームによる体制を整えています。それぞれのエキスパートが専門分野の知識や技術を持ち寄り、患者さんにとって最適と思われる治療法を選択し、治療を行います。

担当医師の紹介

小児循環器科の医師

小児循環器科 部長

  矢崎 諭

  矢崎医師の紹介ページ⇒こちら

小児循環器科 副部長

  上田 知実

  上田医師の紹介ページ⇒こちら

循環器内科の医師

循環器内科 主任部長

  七里 守

  七里医師の紹介ページ⇒こちら

循環器内科 医長 

  佐地 真育

  佐地医師の紹介ページ⇒こちら

担当医師からのメッセージ

矢崎先生、七里先生のご指導の下、カテーテルインタベンション医として成人先天性心疾患治療チームに携わらせていただいております。
負担の少ない低侵襲カテーテル治療で一人でも多くの患者さんを救うことを目標に日々診療を行っております。動脈管開存症(PDA)は先天性心疾患の一つです。20歳を過ぎた方でも治療方針決定や実際の治療には小児科学の知識と経験を要します。

榊原記念病院では小児循環器科と成人循環器内科によるチーム医療を行い、患者さんにより良い医療を提供することを心がけています。
(成人循環器内科 医長 佐地真育)

小児循環器科医ですが、赤ちゃんから高齢者まで20年以上にわたり、動脈管開存症のカテーテル閉鎖術に携わっています。動脈管開存症はその形態が多岐にわたりますので、患者さんごとの形態に合致した閉鎖器具を適切に選択することが最も大切です。

2009年以降は、動脈管開存閉鎖システムが日本にも導入され、ほとんどの動脈管開存症がカテーテルで閉鎖できるようになりました。現在使用可能な4種類の閉鎖器具を適切に使用して、安全な治療が実現できるように心懸けています。
(小児循環器科 部長 矢崎 諭)

患者さんを紹介いただく医療機関のみなさまへ

治療が必要か否か判断に迷う場合でもご紹介いただければ幸いです。治療適応の判定から治療方法の選択、治療時期の選定など、患者さんとよく相談して決定させていただきます。

遠方にお住まいの方で治療を希望される場合

当院は、東京を問わず、全国から患者さんを受け入れています。当院の治療が終わった後は、お住まいの地元の医師と連携して行い、当院へ通院いただく回数をできる限り少なくいたします。

治療の相談を希望される場合

患者様からのお問い合わせ 042-314-3111 (代表)

平日9:00~16:00にお願いいたします。

医療機関様からのお問い合わせ  042-314-3142 (連携室)

平日の9:00~17:20、または 毎月奇数週の土曜日の9:00~13:00にお願いいたします。