先輩からのメッセージ 第4回 瀨川 未玖さん

第4回 瀨川 未玖さん「普通の人生の何倍も"人のこころ"に触れられる、そんな人生だと思っています」

Q.自己紹介をお願いいたします。 

瀬川未玖です。平成4年生まれで青森出身、在住です。子供の頃から絵を書くのが好きで、趣味でイラストを書くほかに、ご依頼を受けて書いています。

Q.ご自身の病気について、また、これまでに受けた手術について教えてください。

生まれてすぐに、DILV(左室性単心室)TGA(完全大血管転位症)PDA(動脈管開存症)PH(肺高血圧症)と青森の病院で診断され、出後1週間後にPA banding(肺動脈バンディング)を受けました。それから3回ほど県内の病院で手術を受けました。

当時担当してくださっていた主治医が、たまたま榊原記念病院の高橋先生と知り合う機会があり、私の話をしてくれたことで「一度、診てあげるから連れてきて」ということになり、榊原で高橋先生から手術をしてもらうことができました。
それからは、大きな手術やカテーテル検査などは、全て榊原で受けています。

5歳のときに榊原でBTシャントというオペをし、6歳の時グレン手術をしました。
今まで7回手術をし、ようやく26歳の時に念願のフォンタン手術まですることができました!

おかげで今では、常に持ち歩いていた携帯酸素や車椅子を使わずに、ひとり旅ができるようになり、1つ夢が叶いました!

Q.病気のことは、周囲の方にどのように伝えてますか?

長年付き合いがある友人たちは病気のことを知っているので、改めて話すことはないですし、友人も病気だからといって変に気を使ったりする訳ではなく、普通に接してくれます。

ただ、初めて知り合う方や病気のことを知らない方には、重いものを持ったり運んだりなどの負担を伴うことを要求された際などに、必要なら病気のことを話すようにしています。
話す際も「こういう事はできるけど、こういう事はできない」と、どこからどこまでが自分の体調と体力の範囲内で出来るかを言ったほうが相手も分かりやすいので、無理なことは無理せず、人に頼んでやってもらうようにしています。

Q.学校生活や友人との間で困ったり、苦労したことはありますでしょうか?そんな時、誰かの助けを借りたことはありますか?工夫したことについて教えていただけますか?

小学校に入学する時、区で指定された学校ではなく、いとこが通っている学校へ入学しました。
理由は何かあった時に親戚がいた方がいいと両親が思ったからです。

入学の際は、先生方に病気の説明をし、担任の先生からも同学年の生徒たちに「みくちゃんは心臓が悪いから具合が悪い時、自分で自分の顔を見れない。だから顔色が悪い時は教えてあげて」と説明してくれたので、周りの友達は荷物を持ってくれたり、手が冷たいと温めてくれたりと、優しく接してくれました。

学年が上がって教室が上階になると、階段の上がり下がりが大変な自分のために、担任の先生がいつも自分をおんぶして階段を上がってくれたのが有難くて今でも覚えています。

通学の際は、小中学校の9年間、両親が車で送り迎えをしてくれ、高校は通信制学校に入学し、自宅にいながらパソコンを使ってオンライン授業やレポートをやれる高校にしました。
年に一度、スクーリングという3泊4日で修学旅行のように学校に集まって授業を受ける事があったんですが、その時に同じ学校に通う友達が全国から集まるので、そこで地方に住む友達を作れたのが楽しかったです。

このような長距離を歩かなければならない移動や、小中学校の修学旅行の際は、自前の車椅子を持参し、母親と参加させてもらいました。

Q.自身の進路選択の際、どのように決めてこられましたか?

自分の体力でやれるかどうかが、一番の要になりました。
できるだけ心臓の負担にならないように。なので、健常者の方のように何でも選択肢がある訳ではないですが、自分で出来る範囲で、やりたいことを(もしダメになっても)やってみる。
その中で続けられそうなことを無理がない程度でやっています。

Q.現在の職業につかれて、楽しいことややりがいを教えてください。

©2020 Segawa miku All Rights Reserved.

現在は週に2、3度、短時間ですがホテルスタッフの手伝いをしてます。その他に実家の事務仕事の傍ら、絵の依頼を受けてイラストを書いています。

最初は自分のインスタグラム miku(miQu/グルミ) (@miipy_hobby) に趣味のイラストを載せていたのですが、次第にペットや子どものイラストを書いてほしいと依頼されるようになりました。
今は地元の方からのリクエストで、看板やTシャツのデザインなども書いたりしています。
依頼されたイラストが思った以上に上手くできたり、お渡しする時に表情がゆるんで喜んでもらえた時が嬉しいです。

小さいころから長い入院生活の中で、病室でよく絵を描いていました。おかげで今ではここまで絵を描けるようになったので、それを自分の個性の一つとして、活かすことができています。

©2020 Segawa miku All Rights Reserved.

Q.これから大人になる子どもたち、ご家族の方に応援メッセージをお願いいたします。

心臓病を抱えている方は、一見健常者の方と変わらないので、そのせいで自分と周りを比べ「どうして自分だけ皆と同じように生きられないのだろう」と感じたり、考える時が必ずくると思います。
みんなと同じような進学や一人暮らしができなかったり、旅行ができなかったり、普通に働けなかったり…。
普段考えなくとも人生の岐路に立った時には嫌でもその壁にぶち当たります。

正直に言って「病を抱えて生きる」ということは大変です。
辛いです、普通に生きるより。やりたい事よりやれない事が多いです。
理不尽に感じることもあります。たまに生まれてきたこと自体も嫌になるかもしれません。

でも、いくら泣いたところで病気は治らないです。自分で自分の状況を受け入れて進んでいくしかないです。
進んで生きていくうちに、成長していくうちに、振り返った時に自分が思ってた以上に沢山の人が自分のことを救おうとしてくれたことに気づきます。

自分が思うより沢山の周りに支えられ、自分が思ってる以上にたくさんの人が自分のことを想ってくれてたことに気づきます。
この病気を抱えて健常者の人のように生きる人生は難しいけれど、普通の人生の何倍も”人のこころ”に触れられる、そんな人生だと自分は思います。

これから、いろんな経験がたくさん待ってると思いますが、悩んだり辛いときは闘病中の経験が自分を助けてくれると思います。

「普通の人が経験しないような痛みや状況を乗り越えてきた自分は強い!これくらい大丈夫だ。何とかなる!」

そう思うと生きていけます。
自分が抱えてる悩みは、生きたかった誰かが経験したかった、”幸せな悩み”かもしれないから。
皆さんもそう思えば大丈夫です。
自分なりの「普通の日常」を焦らず、ゆっくり歩んで行ってほしいです。