心房中隔欠損症とは

心房中隔欠損症とはのイメージ

心房中隔欠損症とは、心臓の上部に位置する“右心房”と“左心房”という2つの部屋を隔てる壁である“心房中隔”に穴が開いている状態を指す病気です。生まれつきの病気ですが、幼少期に症状が現れることはまれで、成人してから発見されることも少なくありません。

このページでは、心房中隔欠損症の概要や主な症状、治療方法などについてご紹介します。

心房中隔欠損症とは?

心臓は4つの部屋に分かれており、このうち上部に位置する2つの部屋をそれぞれ“右心房”“左心房”といいます。心臓中隔欠損症では、この右心房と左心房を隔てる壁“心房中隔”に穴が開いていることにより、心臓がはたらく際により強い負荷がかかってしまいます。

▲通常の心臓と心房中隔欠損症の人の心臓の違い

そもそも、この穴は卵円孔(らんえんこう)と呼ばれ、胎児の間は誰しもが持っているものです。しかし、通常であれば生まれてから数時間後には自然と塞がり、“卵円窩(らんえんか)”と呼ばれるくぼみになることが一般的です。心房中隔欠損症は、何らかの理由でこの穴が塞がらずに残ってしまった状態を指します。

心房中隔欠損症の分類

心臓中隔欠損症は穴の開いた位置によって、大きく4種類に分類されます。以下では、それぞれの種類についてご紹介します。

心房中隔欠損症の種類

一次孔欠損型

心房の下部にある“心室中隔”に近い位置に穴が開いている状態です。“心内膜症欠損型”と呼ばれることもあります。

二次孔欠損型

本来卵円窩が生じるはずの心房中隔の中央部分に穴が開いている状態です。心房中隔欠損症の中でもっとも多くみられます。

静脈洞

心房中隔の上部に穴が開いている状態です。

冠静脈洞型

心臓の静脈の壁に穴が生じている状態です。

心房中隔欠損症の症状

心房中隔欠損症は生まれつきの病気ですが、幼少期のうちに症状が現れることはまれです。症状が現れる場合でも、体重が増えにくい、同世代の子どもと比較して小柄である、体を動かすと息切れをしやすい、風邪をひきやすいなど、あまり特徴的な症状ではないため、見落とされがちです。

ただし心房の壁がまったくない場合や、ほかの心臓病・肺の病気などと合併している場合には、幼少期から心不全などの症状がみられることもあります。

大人になってから症状が現れることが一般的

心房中隔欠損症では、幼少期に明確な症状が現れなかった場合でも、年齢とともに病気が進行し、成人期・中年期に症状が現れることが一般的です。女性では妊娠・出産をきっかけに症状が現れる方もいます。主な症状としては、動悸や体を動かしたときの息切れ、顔のむくみなどが挙げられます。

また、心房中隔欠損症の患者さんは長年にわたって心臓に負荷がかかっているため、大人になってから不整脈や肺高血圧症、心臓弁膜症などの病気が生じやすい傾向があります。

心房中隔欠損症の検査方法

心房中隔欠損症は、無症状のうちに聴診や心電図、X線検査などで異常が発見され、疑われることが一般的です。確定診断のためには心臓エコー検査行われます。また、治療方針を決定したり、ほかの病気がないかどうか確認したりするために、血管に“カテーテル”と呼ばれる管を通して行う“心臓カテーテル検査”が検討されることもあります。

心房中隔欠損症の治療方法

幼少期に心房中隔欠損症が発見された場合、全例に治療が検討されるわけではありません。血栓が生じて脳動脈が詰まったことのある方など、命に関わる危険がある場合のみ手術治療やカテーテル治療が検討されます。

また心房中隔欠損症が発見された際、すでに心不全や不整脈などの症状があれば、まずはそれらに対する薬物療法が検討されます。その場合も、心臓の負荷が強くなっている場合には、手術治療やカテーテル治療が検討されることが一般的です。

以下では、手術治療とカテーテル治療についてそれぞれご紹介します。

心房中隔欠損症の治療(1)手術治療

心房中隔欠損症では、心房中隔に開いた穴を塞ぐ手術治療(心房中隔欠損閉鎖術)が検討されます。手術では、実際の穴の状態を確認し、穴の形状や大きさ、位置などに合わせて、穴を“パッチ”で塞ぐか、壁を縫い合わせて穴を閉じるかを検討します。

心房中隔欠損症の手術治療は心臓の動きを一時的に止めて治療を行う必要があるため、“人工心肺装置”と呼ばれる器械を使用することが一般的です。

体に負担のかかりにくい手術治療

心房中隔欠損症などに対する心臓手術では、胸の中央の皮膚を20〜25cmほど切開し、胸骨を切り開いて心臓に触れる“胸骨正中切開”が一般的な手術方法でした。しかし近年では、胸骨正中切開より体に負担のかかりにくい手術治療として低侵襲心臓手術(MICS)が登場しています。

心房中隔欠損症で行われるMICSの1つとして、3D内視鏡を用いた“3D-MICS”が挙げられます。3D-MICSでは、片胸の皮膚を3cm程度切開するほか、内視鏡を入れるための穴を開けて、肋骨(ろっこつ)の隙間から心臓の手術を行います。胸骨を切り開かなくてよく、傷も小さいため、術後の患者さんの回復が早くなることが期待できます。

また、3D内視鏡を使って内部を観察しながら手術を行うため、肉眼で見るよりもはっきりと手術部位を確認することができ、肋骨を広げる“開胸器”も不要なため、術後の痛みも軽減されるといわれています。

心房中隔欠損症の治療(2)カテーテルインターベンション治療

カテーテル治療とは、血管に“カテーテル”と呼ばれる細い管を通して行う治療方法です。心房中隔欠損症に対して行われるカテーテル治療は“カテーテルインターベンション治療”と呼ばれ、太股の付け根にある太い血管からカテーテルを挿入し、心房中隔の穴まで進めた後、専用の装置を挿入して穴を塞ぎます。

カテーテルインターベンション治療は、手術治療と比較すると体に残る傷が小さく、人工心肺装置も使用しないため、患者さんへの負担がかかりにくい治療といわれています。しかし、どんな心房中隔欠損症に対しても行えるわけではなく、穴が小さく、周囲の壁がしっかりしているなどの条件を満たした場合のみ、検討されます。

受診希望の方へ

心房中隔欠損症にはさまざまな種類があり、病気の種類や患者さんの全身状態に合わせて治療方針が決定されます。近年は、医学の進歩によって患者さんの体に優しい治療も登場していますので、治療方針を決める際は医師とよく相談するように心がけましょう。

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セカンドオピニオン

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帝国大学医学部附属病院

帝京大学医学部附属病院は、総合病院のため、合併症が多くある患者さんでもほかの診療科の医師と協力しながら治療を行うことができます。手術支援ロボットダビンチを用いて、低侵襲心臓弁膜症手術(僧帽弁形成術等)を行っています。

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帝京大学医学部附属病院について

帝京大学医学部附属病院 心臓血管外科 主任教授
下川 智樹
心臓弁膜症、冠動脈疾患、大動脈疾患、心房中隔欠損症へ
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