心筋梗塞とは

心筋梗塞とはのイメージ

心筋梗塞(しんきんこうそく)とは、心臓の筋肉へ栄養を運ぶ“冠状動脈”が血栓などによって完全に詰まることで、心臓の壁のはたらきが弱くなってしまう病気です。近年は、冠状動脈の一部が狭くなり血流が悪くなる“狭心症”と併せて、“虚血性心疾患”や“冠状動脈性心疾患”などと呼ばれることもあります。

このページでは、心筋梗塞の概要や主な症状、治療方法などについてご紹介します。

心筋梗塞とは?

心筋梗塞は心臓の筋肉へ栄養を運ぶ“冠状動脈”が血栓などで完全に詰まってしまい、血流が止まることで心臓の壁(心筋)のはたらきが弱くなる病気です。血流が止まった心筋は壊死(えし)してしまうため、心臓の機能が低下して心不全や不整脈などを引き起こす可能性があります。また、時に突然死に至ることもあります。

▲心筋梗塞を起した冠動脈の様子

心筋梗塞の原因

心筋梗塞をはじめとする虚血性心疾患は、冠状動脈の動脈硬化が進行することによって起こると考えられています。動脈硬化とは血管がしなやかさを失い、硬くなってしまうことをいい、血管の中にコレステロールなどの塊(プラーク)がたまりやすくなったり、血栓が生じたりしてしまいます。

動脈硬化が進行し血管の中にプラークがたまると、血管の内側が狭くなり、血流が悪くなる“狭心症”になります。その後プラークが剥がれ落ちて血栓が生じると、心臓や脳の血管を詰まらせて心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こします。

心筋梗塞を引き起こす危険因子としては、以下のようなものが挙げられます。

心筋梗塞の主な危険因子

  • ・高血圧症
  • ・高脂血症
  • ・糖尿病
  • ・肥満症
  • ・喫煙習慣
  • ・精神的なストレス

など

心筋梗塞の症状

心筋梗塞では、激しい胸の痛みや呼吸困難、冷や汗、吐き気・嘔吐などの症状が現れます。胸の痛みは狭心症でも起こりますが、心筋梗塞による胸の痛みはそれよりもさらに激しく、継続時間も15分以上と長いことが特徴です。また、狭心症の発作に有効なニトログリセリンを服用しても効果がありません。

いつもと違う強い胸の痛みなどを感じた場合には速やかに医療機関を受診し、救急車を呼ぶことも検討しましょう。

心筋梗塞の検査方法

心筋梗塞は一刻を争う病気のため、医療機関到着後は直ちに検査・治療が行われます。診断に用いられる検査方法としては、血液検査や心電図検査、心臓超音波(心エコー)検査などが挙げられます。

心筋梗塞の治療方法

心筋梗塞の主な治療方法として、血栓溶解療法・カテーテル治療・手術治療が検討されます。以下では、それぞれの治療方法についてご紹介します。

心筋梗塞の治療方法(1)血栓溶解療法

血栓による心筋梗塞で発症から12時間以内の場合、適応があれば血栓溶解薬による治療が検討されます。血栓溶解薬とは、冠状動脈に詰まっている血栓そのものを溶かす治療方法で、点滴によって治療薬を投与します。ただし、出血を引き起こしやすくなるため、脳出血などの合併症に注意が必要です。

心筋梗塞の治療方法(2)カテーテル治療

カテーテル治療とは、血管の中に“カテーテル”と呼ばれる細い管を入れて行う治療方法です。心筋梗塞に対するカテーテル治療には複数の方法がありますが、中でもよく行われるのは“ステント治療”です。

ステント治療とは、血栓やプラークによって詰まった冠状動脈に“ステント”と呼ばれる金属製の筒を留置することにより、血流を再開させる治療方法です。近年はステントを留置した場所が再び狭くなったり詰まったりしないよう、さまざまなステントが開発されています。また、金属のステントを留置した場合は、再び血栓が生じないよう“抗血小板薬”を継続的に服用することが一般的です。

心筋梗塞の治療方法(3)冠動脈バイパス手術

冠動脈バイパス手術とは、詰まってしまった冠状動脈の代わりに迂回路となる血管をつなぐことにより、心筋に血流が行き渡るようにする手術です。

心筋梗塞で行われることはまれですが、何らかの理由でカテーテル治療が難しい場合や、カテーテル治療による合併症が生じた場合に検討されます。狭心症で複数の血管が狭くなっているといった場合にも、一度の手術で血流を改善することが期待できます。術後はリハビリテーションが必要になることが一般的です。

体に負担のかかりにくい手術方法もある

冠動脈バイパス手術では、従来胸の中央の皮膚を20~25cmほど切開し、胸骨を切り開いて行う“胸骨正中切開”が一般的でした。また手術中は人工心肺装置を使用し、一時的に心臓を止めて行っていました。しかし、近年はより体への負担が少ない手術“低侵襲心臓手術(ていしんしゅうしんぞうしゅじゅつ)(MICS)”として“左前小切開冠動脈バイパス手術(MICS-CABG)”が行われることもあります。

MICS-CABGとは、片胸の皮膚を6~8cmほど切開し、肋骨(ろっこつ)の間を切り開いて行う冠動脈バイパス手術です。従来の冠動脈バイパス手術と比較すると傷が小さく、術後の回復が早くなることが期待できます。またMICS-CABGでは、心臓を動かしたまま手術を行うことが一般的なため、人工心肺装置を使うことにより懸念される合併症を防ぐこともできます。

心筋梗塞の治療実績

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受診希望の方へ

心筋梗塞では速やかな診断・治療が重要です。いつもと異なる胸痛や、冷や汗などの症状が現れたときは我慢せず速やかに医療機関を受診し、救急車を呼ぶことも検討しましょう。

また、すでに狭心症と診断されている方は、心筋梗塞に至る前に治療を行うことが大切です。狭心症や心筋梗塞の患者さんに対してステント治療をはじめとする冠動脈カテーテル治療や、患者さんの負担を軽減したMICS-CABGを熱心に行っています。帝京大学医学部附属病院ではロボットを用いて内胸動脈を採取し、MICS-CABG手術を行っています。

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帝国大学医学部附属病院

帝京大学医学部附属病院は、総合病院のため、合併症が多くある患者さんでもほかの診療科の医師と協力しながら治療を行うことができます。手術支援ロボットダビンチを用いて、低侵襲心臓弁膜症手術(僧帽弁形成術等)を行っています。

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〒173-8606 東京都板橋区加賀2-11-1
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帝京大学医学部附属病院について

帝京大学医学部附属病院 心臓血管外科 主任教授
下川 智樹
心臓弁膜症、冠動脈疾患、大動脈疾患、心房中隔欠損症へ
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