2018.01.08

心臓病と妊娠・出産 〜 産婦人科のとりくみ(その1)〜

当院の産婦人科は、心臓の病気をもつ女性が安心して妊娠、出産できるようお手伝いすることを使命としています。産婦人科の医師と助産婦、看護師が、循環器の専門医と密接に協力して診療や治療にあたっています。

当院の産婦人科の特徴について、産婦人科部長の桂木医師と、超音波専門医の吉田医師、そして遺伝専門医の森崎医師に聞きました。

――榊原記念病院の産婦人科の特徴を教えてください。

榊原記念病院の産婦人科は、日本でも有数の循環器専門病院である当院の特性を活かして診療・治療にあたっています。2016年には、160例の分娩を取り扱いました。そのうち、およそ3分の1が胎児の心臓や大血管に病気のあるケース、3分の1が母体に心臓病などの合併症があるケースで、残りの3分の1が母児に合併症のない分娩でした。この比率は2017年に入って多少変化してきてはいますが、母体や胎児に循環器疾患のあるケースが全分娩数の約3分の2近くを占めるのは、国内の医療施設の中でも非常に珍しいと思います。

――榊原記念病院の産婦人科を受診するメリットは何ですか。

妊娠から出産の過程では、お母さんもお腹の中の赤ちゃんも大きな変化を体験します。近年では、超音波検査が大きく進歩したことから、出生前の検査で胎児に心臓病があるかどうかを診断できるようになりました。当院では、胎児の心臓に何かしらの問題があると分かった場合には、出生前から産婦人科の医師と小児循環器科の医師とが連携して慎重に治療方針を検討し、生後すぐに治療を開始します。

また循環器疾患をもつ方が妊娠される場合には、妊娠中の体の変化に応じてどのように持病管理をしたらよいのか、とても気がかりだと思います。当院では、産婦人科と循環器の専門医とが密に連絡をとりあって診療にあたっています。ほかにも、元気な赤ちゃんを産めるかどうかと心配されている女性やそのご家族には、妊娠前のコンサルティングを行っています。また産後の体の変化や生活の変化に対して、どのように持病管理につとめたら良いのか、そうした点についても、きめ細かな診断や診療、またコンサルティングを提供しています。妊娠から出産の一連のプロセスにおいて、母体と赤ちゃんのケアを1つの病院内で切れ目なく提供できる点が、当院の最大の強みだと思います。

――遺伝カウンセリングや妊娠初期の超音波検査を積極的に取り入れていますね。

胎児スクリーニング検査と一口に言っても様々な検査方法があります。遺伝カウンセリングでは、そうした個々の検査の精度や方法、また意味合いなどを、検査実施前にきちんとご理解いただけるよう努めています。また検査後には、その検査結果を正しく理解していただくためのお手伝いや、次の行動へうつすためのサポートも行っています。

妊娠初期の超音波検査は、胎児に大きな奇形がないかを調べると同時に、ダウン症候群などの一部の染色体異常について、その確率を推定することができる検査です。この超音波検査による胎児の染色体異常のリスク評価では、優れた検査技能が求められます。国内に専門の認定資格はありませんが、国際的には超音波計測の資格として英国の FMF (Fetal Medicine Foundation)に基づく認定資格が知られています。当院にはFMF認定資格取得者が2名おり、その有資格者が検査を行っています。

氏名:桂木 真司(かつらぎ しんじ)
<略歴>
1967年 宮崎生まれ
1995年 宮崎医科大学医学部医学科卒
宮崎大学産婦人科、国立循環器病センター 周産期・婦人部 部長等を経て、2013年4月より榊原記念病院勤務、医学博士
産婦人科参照(http://www.sanka.heart.or.jp/gaiyo/

氏名:吉田 純(よしだ あつし)
<略歴>
1964年 東京生まれ
1989年 防衛医科大学校医学教育部医学科卒
防衛医科大学校産科婦人科、三重大学産科婦人科、国立病院機構西埼玉中央病院産婦人科等を経て、2015年より榊原記念病院勤務。医学博士
産婦人科参照(http://www.sanka.heart.or.jp/gaiyo/

氏名:森崎 裕子(もりさき ひろこ)
<略歴>
1956年 静岡生まれ
1980年 東京大学医学部医学科卒業
東京大学医学部附属病院、Duke大学医学部、Pennsylvania大学医学部、国立循環器病センター 臨床遺伝科医長を経て、2016年4月より榊原記念病院勤務。医学博士

  • 臨床遺伝専門医
  • 指導医
  • マルファン症候群やエーラスダンロス症候群をはじめとして、様々な先天性の病気や遺伝病 の患者さんの診療と研究に長く携わってきました。病気に限らず、家族のこと、学校や仕事のこと、結婚のことなど、遺伝に関係するあらゆる問題のご相談にのりますので、気軽にお声をおかけください。