卵円孔開存(PFO)に対するカテーテル治療

-卵円孔開存が原因とされる脳梗塞を予防する、新たな治療法-

卵円孔開存(PFO)を通過した血栓を原因とする脳梗塞は、薬物療法以外に、カテーテルによる閉鎖治療によって再発を予防できる可能性があります。カテーテルによる治療は、脚のつけ根からカテーテルと呼ばれる細い管を用い、血管の中を通して行います。胸を開くことがなく、治療の時間、手術後の入院期間も短くて済みます。

卵円孔開存(PFO)とは

卵円孔とは

卵円孔とは、心臓の右心房と左心房の間の壁(心房中隔)の中央に組織が重なり合うようにできた穴で、胎児のとき、胎盤を通して流れてくる酵素を含んだ血液を胎児の全身に循環させるためにあります。卵円孔は、通常、出生後数カ月以内に自然に閉じますが、成長しても閉じずに残っている場合があります。この状態を「卵円孔開存」(PFO Patent Foramen Ovaleの略)といいます。
成人の3人~4人に1人は卵円孔が閉じていないといわれ、かなり高頻度でみられます。卵円孔を通して心臓の右心房から左心房に少量の血液が流れることがありますが、多くの場合症状もなく、治療の対象になりません。

上記画像提供 アボットメディカルジャパン合同会社

卵円孔開存と脳梗塞の関連

卵円孔開存が、脳梗塞や一過性の脳虚血発作の原因となることが、ごくまれにあるといわれています。静脈にできた血栓が卵円孔を通って右心房から左心房、動脈系の血管に流れ、さらに脳に到達したとき、脳の動脈に詰まって脳梗塞を起こすためです。

治療法

治療の選択肢

脳梗塞の再発を抑える治療法の選択肢には、次のようなものがあります。

  • 薬物療法
  • 開胸術による卵円孔閉鎖
  • カテーテルによる卵円孔閉鎖治療

薬物療法とは、アスピリンやワーファリンなどの抗血栓薬を服用することです。従来、この方法によって脳梗塞の予防が行われてきました。有効な治療法ですが、薬を長期間服用する必要があります。開胸術とは、胸を切開して行う外科手術です。心臓を人工心肺装置を使い、心臓を一時的に止めて行います。現在、卵円孔の閉鎖を目的とした開胸術は、あまり行われなくなりました。

カテーテルによる治療

画像提供 アボットメディカルジャパン合同会社

2019年12月より、卵円孔開存に対する閉鎖栓デバイスを用いたカテーテル治療が、日本で可能になりました。
この治療の目的は、専用のデバイスを使い卵円孔開存を閉鎖することによって、右心房と左心房の血流を止め、脳梗塞や全身の血栓塞栓症の再発を予防することです。卵円孔開存をカテーテル治療で閉鎖することで、上記で紹介した内服薬の単独による薬物治療よりも、脳梗塞の再発予防効果が高いことが、臨床試験で示されています。

閉鎖栓デバイスとカテーテルについて

画像提供 アボットメディカルジャパン合同会社

閉鎖栓デバイスは、閉鎖性を高めるため医療用の布で覆われた丸い金属のメッシュのディスクを、2枚重ねて構成されています。この閉鎖栓デバイスを、カテーテルと呼ばれる形状記憶合金のワイヤーを編み込んだ自己展開式の器具を使って、脚のつけ根から心臓へ運びます。デバイスのサイズは数種類あり、卵円孔の大きさや形に応じて、担当する医師が選択します。

同じ素材を用いた先天性心疾患(心房中隔欠損症)に対するカテーテル閉鎖術は、すでに国内で1万人以上に対して行われ,良好な治療成績が報告されています。

カテーテルの実施手順

まず、脚の付け根の皮ふを少しだけ切開します。切開部からカテーテルを血管内に挿入し、心臓の卵円孔付近まで誘導します。この時、2枚のディスクはカテーテルの管の中に折り畳まれた状態で運ばれます。その後、カテーテルを右心房側から卵円孔に差し入れます。(図1)(図2)
医師が画像診断ツールを用いてデバイスが正しい位置にあることが確認すると、折りたたまれていたデバイスが左心房側で拡げられ、固定されます。(図3)
さらに、デリバリーカテーテルを右心房側に移動させ、もう一方のディスクを展開します。(図4)
デバイスを留置し(図5)(図6)、カテーテルを体外に抜いて治療が完了します。
標準的な治療時間は、1~2時間程度です。留置後のデバイスは、体の自然治癒により、次第に内皮で覆われていきます。

図1
図2
図3
図4
図5
図6

上記画像提供 アボットメディカルジャパン合同会社

動画(カテーテル治療)

動画提供 アボットメディカルジャパン合同会社

術後について

術後は、担当医師および医療チームがアフターケアについて、患者さんと話し合います。抗血小板薬が処方されますので、医師の指示に従い服用してください。退院後、定期的に外来受診を行い、心エコー検査などでデバイスが適切に留置されていることを確認します。出血、痛み、不快感などがある場合、医師に伝えてください。

治療の適応

治療の適応について、日本では、日本脳卒中学会、日本循環器学会、日本心血管インターベンション治療学会が合同で作成した「潜因性脳梗塞に対する経皮的卵円孔開存閉鎖術の手引き」をもとに判断します。
主な適応は下記の通りです。

この治療を選択するメリットとデメリット

この治療の優れた点は,外科手術を行わずに欠損孔をふさぐことができることです。手術で胸を開くことによる傷は避けられます。また、外科手術では人工心肺を用いて心臓をいったん止める必要がありますが,この治療では必要ありません。さらに、1週間程度の入院で済み、比較的短期間で、元の日常生活が送る事ができます。

一方で、カテーテル治療の欠点として、すべての卵円孔開存症が治療できるわけではないことがあげられます。担当医が、適応の可否に加え、メリットとデメリットを詳しく説明いたします。

当院の特色

脳血管障害専門医と循環器専門医による連携が重要であることから、日本医科大学多摩永山病院の脳神経内科とブレインハートチームを結成し、治療選択や効果、安全性などを十分議論しています。院内においても、小児循環器科、麻酔科などの異なる専門領域の専門家による強力な連携体制を整えており、さまざまな患者さんに対する集学的なアプローチを行った医療を提供できることが、当院の強みです。

医師の紹介

循環器内科 主任部長
七里 守

循環器内科 部長
高見澤 格

循環器内科 医長
佐地 真育

循環器内科 医員
泉 佑樹

小児循環器科 医長
吉敷 香菜子

小児循環器科 部長
矢崎 諭

担当医師からみなさまへメッセージ

脳梗塞再発を予防できる低侵襲治療です

脳梗塞は最も生活の質を落とす疾患の一つです。年齢が若く、基礎疾患がないにもかかわらず脳梗塞を起こした方は卵円孔開存症(PFO)による脳梗塞の可能性があります。近年の欧米の臨床試験で、PFOの方に脳梗塞の二次予防として内服加療で様子をみているよりもカテーテル治療を行った方が脳梗塞再発予防効果が高いことがわかりました。体への負担の少ない、安全性の高いカテーテル治療で次の貴方の脳梗塞を予防できる可能性があります。当院では主に循環器内科、神経科、小児循環器科の専門医でチームを結成し、よく話し合いをして患者さん一人一人にあった治療をお勧めしています。お困りの方はお気軽に当院にご連絡ください。(循環器内科 医長 佐地 真育)

治療の相談を希望される場合

患者様からのお問い合わせ 042-314-3111 (代表)

平日9:00~16:00にお願いいたします。

医療機関様からのお問い合わせ  042-314-3142 (連携室)

平日の9:00~17:20、または 毎月奇数週の土曜日の9:00~13:00にお願いいたします。